

大学生が決める文学賞
文芸サークルの大学生が投票して決める『大学読書人大賞』という文学賞ができました。
若い人の活字離れがよく囁かれますが、その中で大学文芸サークルの人たちが「大学生にぜひ読んでほしい本」を基準に選ぶのが、昨年6月にスタートした、この賞の特徴。
もともとは読書の習慣を推進するJPIC(出版文化産業振興財団)の中泉淳事務局長が、フランスで行われている、高校生が決める文学賞『高校生ゴンクール賞』からヒントを得て、大学生に呼びかけたのがきっかけだそうです。
初代実行委員長には法政大学文学研究会の鈴本万有理さんが選ばれ、彼女の呼びかけで副委員長となった一橋大学文芸部の河野冬樹さんをはじめ、計11人の学生が実行委員となって運営しています。参加するサークルは全国の30の文芸サークルで1000人以上の学生が投票に参加。今年1月9日にはノミネート5作品も決まりました。この5作品の中から、ゴールデンウィーク中に行われる、大学生による公開討論会を経て『大学読書人大賞』が決まります!
5月4日『大学読書人大賞』に『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク著、光文社古典新訳文庫)が決まりました。
本当に薦めたい本!
大学読書人大賞の実行委員のメンバー
(前列中央右)実行委員長 鈴本万有理さん (前列中央左)副委員長 河野冬樹さん
大学読書人大賞の選考方法は少し複雑。まずサークルごとに「大学生に読んでほしい本」を最大5作品まで選び投票します。その投票によって決まる上位5位の作品がノミネート作品となります。今度は各サークルでノミネート作品を全て読み、その中から「大学生に読んでほしい本」を1つ選び、各サークルごとにその推薦文を提出。次にサイトにアップされた推薦文の中からサークルごとに最も優秀だと思う推薦文を選んでもらいます。最後にそれぞれの作品の最優秀推薦文を執筆したサークルの代表者5名に公開討論会を行ってもらい、最も高い評価を得たものが『大学読書人大賞』になります。
この選考方法も学生が自分たちで決めたもの。ただ単に人気投票の賞ではなく、「本当に薦めたい本」を決めるため、他の文学賞に比べて、推薦文や討論会が重要になっています。つまり、本の面白さも重要ですが、その本を紹介するプレゼンターも重要になってくるということ。他の文学賞に比べ、「薦めたい!」という気持ちに焦点が当たった文学賞のようです。
拡がる本好き大学生の輪
今まで、文芸部に所属する本好きの大学生が、『この本が面白い!』と言える場がなかった。実行委員長の鈴本さんが『大学読書人大賞』に取り組もうと思ったのも、大学生が公の場で、本について語れる場を作りたいと思ったため。
特に大学の文芸サークルの人たちは、同じサークルの人達で固まってしまい、これまで他大学の文芸サークルとの交流がなかったようです。『大学読書人大賞』がきっかけで、本について議論する場ができたことで、他大学の文芸サークルの人との交流が増えているとか。
また、鈴本さんは「同じサークルでも本について議論することが増え、メンバーの知らなかった一面を知り、前よりサークルの仲が良くなっています。」と語る。
『大学読書人大賞』をやることが結果として、「読書人」の輪を拡げたり、絆を深めるなど様々な局面で活躍しているようです。
目指すはスキマを埋める文学賞
『大学読書人大賞』では、直近1年間の間で出版されている活字主体の本であれば、ジャンルを問わずエントリーできます。エントリーした本も純文学、ミステリー、児童書、ライトノベル、携帯小説などバラエティに富んでいます。
中には、医学部系のサークルも参加しているため、黄 ミン淑さんの『すぐ「死にたい」という人たち―心療内科の診察室から』のように医学部生ならではの本もあります。逆にベストセラーになるような本は少なく、本好きな大学生のこだわりが見え隠れしますね。
「これからも本好きの大学生ならではの本の選び方を提示していきたいです。」と語るのは副実行委員長の河野さん。鈴本さんも「スキマを埋められる賞にしていきたいです。」と語り、2人とも、世間の賞とは一味違う、新しい本の世界を見せる賞にしていく意気込みをみせています。
【リンク】『大学読書人大賞−大学文芸部イチオシの本』
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